災害時のデマとその影響、そして私たちにできること
地震や豪雨、台風などの災害が発生した際、人々の不安や混乱につけ込むように「デマ(流言・誤情報)」が拡散することがあります。
災害そのものの被害に加え、根拠のないうわさや誤った情報が広まることで、さらに社会に混乱を招いてしまうのです。
近年はSNSの普及により、情報が瞬時に拡散する時代となりました。
その一方で、誤情報や悪意のある投稿もあっという間に広がり、被災者や地域社会に深刻な影響を与えることがあるのです。
本記事では、災害時にデマが生まれる背景や、過去の事例、そしてそれらが人々に与える影響について考察し、デマに惑わされないために私たちができる具体的な対策についても、住民・行政・報道機関の視点から掘り下げて紹介します。
【 目 次 】
災害時にデマが生まれる背景とは?
災害時にデマが発生する背景には、いくつかの要因があります。
人々の強い不安
災害直後は心理的に不安が高まり、真偽を確かめる余裕がありません。
「最悪の事態を避けたい」という気持ちが、未確認情報を信じる行動につながります。
情報の空白
行政や報道機関からの公式発表が遅れると、その隙間を埋めるように憶測が飛び交います。
この「情報の空白」は、デマの温床の原因となるのです。
SNSの拡散力
「いいね」や「リツイート」などの操作一つで数万人に届くのが現代です。
確認を怠ったまま善意でシェアする行為が、デマ拡散の一因になっています。
悪意ある情報操作
中には、混乱を狙って偽の画像や文章を流す人もいます。
詐欺や個人攻撃につなげるなど、意図的なデマも後を絶ちません。
過去に広がった災害時のデマの事例
阪神・淡路大震災(1995年)
地震が発生した当時は、SNSがなかった時代。
それでも様々なデマが拡散しました。
主に、地震発生から数日経っても発生する火災の原因は漏電なのに、「地震保険に入ってない者が火災保険から保険金を得るために放火した」というデマです。
被災地にいる住む人々にとって深刻な問題となってました。
東日本大震災(2011年)
・「放射能の雨が降るから外出禁止」
・「動物園から猛獣が逃げた」
・「関東一円の水道水は危険」
これらのデマがSNSで一気に拡散しました。
放射線に関する不確かな知識が混乱を拡大し、買い占めや避難の遅れを招きました。
熊本地震(2016年)
「給水所で犯罪発生」「猛獣逃亡」といった虚偽投稿があり、拡散したアカウントが逮捕された事例もあります。
ネット上の“いたずら”が実際に法的責任を問われたケースでした。
西日本豪雨(2018年)
「避難所で強盗が横行」といったデマが数万件単位でリツイートされました。
結果として、避難をためらう人が出るなど実害がありました。
令和元年東日本台風(2019年)
「ダムが決壊した」という誤情報が一時的に拡散しました。
実際は決壊ではなく放流であったにもかかわらず、誤解が広がりパニックになった地域もありました。
災害時のデマがもたらす影響
デマが災害時にもたらす影響は以下のことが考えられます。
被災者の精神的負担
命に直結する飲料水や食料の情報が誤って伝わると、人々はさらなる不安に陥ります。
社会的分断
特定の集団を悪者扱いするデマは差別や偏見を助長します。
救援活動の妨害
虚偽の通報や噂は行政や消防のリソースを奪い、本来の支援を遅らせます。
経済的被害
買い占めや物流の混乱につながり、二次的な被害が拡大します。
災害時のデマに惑わされないための対策
災害時の情報収集や発信には、デマの可能性が無いかを見極める必要があります。
・情報の出所を必ず確認する(公的機関・報道機関の情報を優先)。
・SNSでの拡散を慎重に行う(情報の虚実を未確認のままの拡散はNG行為)。
・正しい情報源(防災アプリ・自治体HP・NHK防災)を日頃からブックマークする。
・高齢者や子どもに対しては、家族が積極的に正しい情報を共有する。
行政の立場で災害時に求められること
・災害時には公式SNS・緊急速報メール・ラジオ・防災無線など複数の手段で迅速に情報発信する。
・デマを確認した場合は即時に「これは事実ではありません」と明確に否定する。
・平時から「正しい情報はここで確認できます」という周知活動を徹底する。
・高齢者やネットを利用しない層への伝達手段も確保する。
災害時に報道機関の立場での役割
・出典不明の情報を安易に報じない。
・行政発表と突き合わせて検証する「ファクトチェック」を徹底する。
・誤報が出た場合は迅速に訂正し、視聴者に誤解が残らないようにする。
・解説番組などで「デマの見分け方」を平時から啓発する。
災害時のデマと向き合う社会的な取り組み
教育現場でのリテラシー教育
小中学校の防災教育の中で「デマを見抜く方法」を取り上げる。
地域の防災訓練での情報伝達訓練
単なる避難訓練ではなく、正しい情報を地域全体で共有する練習を行う。
SNSプラットフォームの責任
誤情報を削除する仕組みや、公式アカウントを優先表示する工夫が求められる。
「災害時のデマとその影響、そして私たちにできること」の記事のまとめ
災害時には、真偽の確認が難しい中で不安が広がり、デマが発生しやすい状況になります。
SNSの普及により情報が広がるスピードは格段に増しましたが、その分、誤情報が社会を混乱させるリスクも高まっています。
私たち一人ひとりが情報を鵜呑みにせず、冷静に判断し、正確な情報源を確認する姿勢を持つことが求められています。
また、行政や報道機関も迅速かつ明確な情報発信を行うことで、デマの余地を減らす努力を続けなければなりません。
災害そのものは防ぐことができなくても、デマによる二次被害は私たちの意識次第で減らすことができます。
冷静な対応と確かな情報に基づく行動こそが、私たちの命と社会を守る大きな力になるのです。